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毎日の食卓にもう一品を加えたいとき、野菜を多く取りたいとき、箸休めが欲しい時に重宝される「浅漬け」。スーパーで浅漬けの素を購入して作る手もありますが、費用が多くかかります。できれば自分で作れるようになり、毎日の食事にとり入れたいですよね。
しかしウェブサイトでレシピを見ると、浅漬けの作り方がバラバラで何が正解なのかわからない、という声も多く聞きます。
この記事では
「浅漬けとはそもそも何か」
「浅漬けの素を使わない、浅漬けの作り方のポイント」
について解説します。
浅漬けとは何か?定義について解説
WEB検索で浅漬けレシピを見ると、野菜に塩をまぶしたようなもの、液体に漬けこむものなど方法は異なりますです。そもそも浅漬けとは何なのでしょうか。
全日本漬物協同組合連合会が運営する漬物ポータルサイトの情報を元に「浅漬けについて」解説します(少し理科的な話になります)。
漬物とは何か
「浅漬け」は「漬物」の一種です。まず基本となる漬物についての話です。
野菜の細胞は細胞膜に囲まれており、水分を保っています。これが塩、砂糖など
に触れると、その浸透圧によって細胞膜の防圧機能が壊されます。壊れた膜から細胞内に食塩が入る現象を「漬かる」といいます。
細胞膜破壊が3~4割の場合は浅漬、7割以上でよく漬かった状態になります。
少量の食塩・糖で浅く漬かった状態が浅漬けです。
お新香・浅漬け・菜漬は呼び方が違うが同じこと
壊れた細胞膜から食塩が細胞膜に入り込み、糖やアミノ酸、有機酸、香辛成分と水分が混和することで一種のスープが形成。野菜の食感と合わさった漬物が完成します。
浅漬・菜漬がこれに該当し、俗に言うお新香(業界用語で新漬)になります。
浅漬けとは違う調味漬について
福神漬や甘酢生姜〈ガリ〉などは調味漬(業界用語で古漬)と呼ばれます。
強い食塩で細胞膜を壊し、塩度20%の状態で長く塩蔵。流水で塩抜きを流した後で残った野菜に醤油や酢などの調味液等を浸し込ませた漬物です。
浅漬けを自分で作るポイントについて
先に見た通り、浅漬けは「塩」の浸透圧を利用することで作ります。
浅漬・菜漬は「野菜の塩漬+調味料」と言ってよいでしょう。
液体に浸っていなくても塩の浸透圧が使われていれば浅漬けになります。市販の浅漬けの素を知っていると、液体に浸っているのが浅漬けというイメージが先行しますよね。液体に漬かっていないくても浅漬けになります。
液体に浸す場合も、適切な塩分が含まれているから浅漬けになる、ということです。大事なのは塩による浸透圧です。
浅漬けに使う食塩の量はどのくらい?
漬物協同組合によると市販の浅漬けは食塩2~2.5%の低塩で仕上げ、野菜の風味と塩のバランスの良さを心がけているとのこと。
白ごはん.comでも『野菜の重さに対して2%の塩を加えるのが浅漬けの基本レシピ』と記載されています。
以上の事から「野菜の重さを計り、2~2.5%の塩を使う」のが浅漬けのレシピのベースと言えるでしょう。
実際に計ってみました。キュウリ1本(135g)であれば食塩量2%~2.5%は2.7g~3.3gに相当。小さじ1/2+α の塩を目安にすると良いかと思います。
キュウリ2本であれば、塩の量は小さじ1+α が目安になるでしょう。
※小さじ1の塩の量は5g~6gと言われています。
「浅漬けの素」に似せたレシピ
「浅漬けの素」に似せるため、我が家では以下のレシピで作成しています。
- キュウリ2本(包丁で乱切りに)
- 水 100cc
- 塩 小さじ1
- 砂糖 大さじ1
- 酢 大さじ1
- 白だし 大さじ1
※白だしがなければ 顆粒和風だし 小さじ1、醤油 小さじ1で代用
漬けていると野菜から結構な量の水分が出ます。
最初は薄味で作り、味見をしながら自分の好みになるように足していくのが良いでしょう。
昆布や鰹だしを加えるのもおすすめです。
浅漬けで漬ける時間はどのくらい?
漬ける時間は、食塩の量によって異なります。
一例をあげれば、市販の「浅漬けの素」で漬けこみ時間が30分と記載されているものがありますが、食塩9%・麦芽糖8%を含んでいます。なぜ30分の短時間で漬かるのかというと、塩と糖分の合計が17%という強い浸透圧で野菜の組織を壊して漬かる状態にするからです。ただし、塩分が多いと早く作れる反面、放置時間が長いと塩辛くなってしまうので注意が必要です。
2%程度の低塩の場合は漬けこみに数時間を見ておいた方が良いでしょう。
※塩分量が少なければ、漬けすぎて塩辛くなる失敗もなくなります。
漬ける時間は塩分量、野菜の量、好みの味付けによって変わるので、実際に試して自分の中で最適解を探してくださいね。
浅漬けを早く漬け込む方法は?
短時間で浅漬けを作りたい場合は以下の方法が有効です。
- 野菜を切ることで断面積を増やす。塩と触れ合う面積が増えるので早く漬かる。
- 野菜を漬ける際に重しを乗せる。重量を加えることで野菜の水分を早く出す。
- 袋に野菜・塩・調味料を入れ、手で揉み込む。
- 塩分量を多くする。ただし漬けすぎると塩辛くなるので注意すること。
浅漬けの液体・汁は再利用できる?
一度使った浅漬けの素、浅漬けから出た液体は再利用しないことをお勧めします。
最初に漬けこんだ野菜と塩分濃度の関係により、液体の内容は大きく変化しています。
2回目に使おうとしても最初と同じような浸透圧は期待できませんし、鮮度の点からも新しく作りなおした方が良いでしょう。
浅漬けで塩以外に加える調味料は何がよいか?
風味を付けるために、塩以外の調味料が加えられることがあります。
- 砂糖
- 昆布(刻み昆布、とろろ昆布)
- 唐辛子
- 生姜
- 柚子
- みりん
- 酒
- 酢
- 醤油
- ごま、ごま油
- 顆粒出汁
- 中華スープの素
何をどのくらい加えるのかについては、完全に好みであり、どのような味にするのか自分で決めることができる料理の楽しい部分ですね。
単に香りづけで決めるのではなく、例えばトウガラシの抗菌作用など、それぞれの効能なども考えて選択すると良いですね。
カブの千枚漬け、砂糖しぼりダイコンなどは塩2%、砂糖12%、調味料などで作られるそうです。
市販の浅漬けの素の原材料は?
エバラ食品が販売している「浅漬けの素」には「レギュラー、昆布だし、鰹だし、さわやか甘酢」の4種類があり、それぞれ原材料が異なります。
参考までにそれぞれの原材料を載せておきます。浅漬けを自作するときの参考にしてください。
浅漬けの素 レギュラー 原材料名
還元水あめ、食塩、砂糖、果糖ぶどう糖液糖、醸造酢、醤油/調味料(アミノ酸等)、塩化マグネシウム含有物、香辛料抽出物、(一部に小麦・大豆を含む)
酢と醤油も使われているのが特徴ですね。
浅漬けの素 昆布だし 原材料名
還元水あめ、食塩、砂糖、果糖ぶどう糖液糖、醸造酢、昆布エキス/調味料(アミノ酸等)、塩化マグネシウム含有物、香辛料抽出物、(一部に小麦・大豆を含む)
レギュラーと異なり、醤油を使わずに昆布エキスが使われています。
浅漬けの素 鰹だし 原材料名
食塩、還元水あめ、砂糖、醸造酢、果糖ぶどう糖液糖、醤油、鰹エキス、鰹節/調味料(アミノ酸等)、塩化マグネシウム含有物、香料、香辛料抽出物、(一部に小麦・大豆を含む)
レギュラーと異なり鰹エキス、鰹節、香料が使われています。
浅漬けの素 さわやか甘酢 原材料名
果糖ぶどう糖液糖、りんご酢、醸造酢、食塩、還元水あめ、米黒酢、黒蜜、こんぶエキス/調味料(アミノ酸等)、酸味料、(一部に小麦・大豆・りんごを含む)
レギュラーと異なり、リンゴ酢、米黒酢、黒蜜、こんぶエキスがつかわれています。
以上、浅漬けの素を使わない浅漬けの作り方!食塩の量や調味料、漬ける時間など解説…という話題でした。
おまけ 胡瓜の一本づけ
ときわ系というふっくらとした胡瓜を醤油系の調味液に浸したもの。味覚は2系統。
- 食塩3%、醤油類6%、化学調味料1%で低塩のため味がボケるのを防いで唐辛子で味をしめているもの
- 食塩5%、醤油類12%、化学調味料2%と味の濃厚なもの